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【2125コラム】ものかたり vol.11「ガラス作家、河上智美さんのこと」

河上智美さんとの長いお付き合いのなかで、何度も訪れた工房。
いつもそこには、高温のガラスと対峙する、職人としての姿がありました。

夏場には50度にも及ぶという、灼熱の空間。
工房の奥にある炉を中心に、左右に配された道具や設備は、
器づくりの流れるような美しい動作のなかに次々と吸い込まれていきます。

吹きガラスの体験をさせていただいたとき、鉄竿の重さ、瞬く間に冷え、
扱いにくくなる液状のガラスの難しさに慌て、驚きました。
コントロールをしようとするほどに暴れるガラスの力は、
いまも掌の記憶として残っています。
 
河上さんの傍で、制作の様子を見ていると、生き物のようなガラスと呼吸を合わせ、
むしろその意思を汲むように、息を吹き込み、道具を添わせ、次々と器が成形されていきます。
どこまでがガラスの意思で、どこからが人間の力なのか?
工房には、ガラスと一体となり制作をする、職人としての河上さんがいました。

河上智美さんの工房の片隅にある、大きな金属製のボウル。
そこには、作品を切り離した後、鉄竿の先端に残ったガラスの欠片が集められています。

鉄竿に触れたガラスは、鉄分や金属酸化物を含み、
特有の色や気泡が生じるため、炉に戻されることはないそう。
一年に一度だけ、炉を止める前のわずかの間、
集められた欠片を再び炉に戻し、再生ガラスとして新たに息を吹き込みます。
 
仕上がった再生ガラスは、通常のガラスと比べるとほのかなグリーン。
その色合いもそのときに炉に入れたガラスの欠片によって、現れかたが少しづつ変わるそう。
海の水沫のような、微細な気泡がみられることも特徴です。
 
今回ご紹介する再生ガラスのシリーズは、
河上さんが工房で過ごした一年が、色や気泡として現れているかもしれません。
まるで、その年だけの限定品、イヤープレートのようです。